明治以降関西地域の地震と被害 概説 ▲
この報告書は、明治以降の時期において、関西地方に被害を与えた地震を克明に再調査し、各地震による被害を詳細に記述したものである。
ここには、濃尾地震(1891年)から越前沖地震(1952年)に至る13の地震に関する記録が収録されている。地域的には西は鳥取地震、東は東南海地震、北は福井地震、南は南海地震までが含まれる。それらはいずれも、関西地方(ここでは福井・滋賀・奈良・京都・大阪・和歌山・兵庫の7府県の範囲と規定)に震度Ⅴ以上の影響を与えたものである。 これらの地震の平均発生間隔は約5年、死者・行方不明者の総計は18,000人、うち関西地方での合計は7,700人に達する。関西地方も決して地震の安全地帯ではないことを、この記録は物語っているのである。
本報告書では、第3章の地震毎のまとめにおいて、各地震それぞれについて1.概説、2.地震と被害の概要、3.地震と地形・地質の特徴、被害の詳細、5.ライフラインの被害の詳細、の順に記述するという統一的な構成により被害を比較しやすいよう工夫がなされている。また、第4章では各種被害のまとめ(液状化、震度分布、津波被害、断層、火災、家屋被害と人的被害、砂防・山地崩壊)、第5章では各ライフライン被害のまとめ(道路施設、河川堤防、鉄道施設、港湾施設、電力施設、通信施設、ガス施設、上水道施設)として、被災項目ごとにすべての地震を横断的に考察している。これにより、これらの地震による被害を立体的かつ総合的に把握できることも、本報告書の特色である。さらに、ライフラインの被害については特に克明に記述し、被害がなかった(または報告されていない)ものを含めて網羅的にまとめられていることが、LiNKの報告書としての大きな特徴と言えよう。
本報告の基礎となった資料は、既存の報告書類に加えて、当時の新聞記事の詳細な再調査、戦後の占領下におけるGHQの資料の新たな発掘、LiNKの会員事業者の社内資料の発掘など、丹念な資料収集作業を経て集積されたものであり、新規資料としての価値も高い。兵庫県南部地震の発生を契機として、関西地方は今後10年続く地震活動期に入ったとされ、関西地方の地震対策が急務であるなかで、本報告書がそのための基礎資料として活用されることを念願するものである。
地震名 |
発生年月 |
最激震地域 |
震源規模 |
濃尾地震 |
1891.10.28 |
根尾川・揖斐川上流 |
M=8.0 |
紀伊半島南東部地震 |
1899. 3. 7 |
紀伊半島南東部 |
M=7.0 |
姉川地震 |
1909. 8.14 |
琵琶湖東北岸虎姫付近 |
M=6.8 |
北但馬地震 |
1925. 5.23 |
円山川河口・城崎付近 |
M=6.8 |
北丹後地震 |
1927. 3. 7 |
丹後半島頚部 |
M=7.3 |
河内大和地震 |
1936. 2.21 |
奈良・大阪県境付近 |
M=6.4 |
田辺湾沖地震 |
1938. 1.12 |
田辺市付近沿岸 |
M=6.8 |
鳥取地震 |
1943. 9.10 |
鳥取市付近 |
M=7.2 |
東南海地震 |
1944.12. 7 |
愛知・静岡沿岸 |
M=7.9 |
南海地震 |
1946.12.21 |
四国太平洋沿岸 |
M=8.0 |
福井地震 |
1948. 6.28 |
福井平野付近 |
M=7.1 |
吉野地震 |
1952. 7.18 |
奈良県中部付近 |
M=6.8 |
越前沖地震 |
1963. 3.27 |
敦賀・若狭湾沿岸 |
M=6.9 |
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