ライフラインとLifeline
京都大学 小野祐輔
関西ライフライン研究会は、その名の通り「ライフライン」というキーワードで結びついた研究会です。「ライフライン」というキーワードをGoogleで検索してみると、検索結果の二番目に関西ライフライン研究会が現れました。平成4年に発足して以来、既に日本を代表するライフライン関連の団体へと成長したと言っても怒られることはなさそうです。
ところで、私は普段何気なく「ライフライン」という言葉を用いていますが、正しい定義はどんなものでしょうか?大辞林では「生活・生命を維持するための水道・電気・ガス・通信などのネットワークシステム。災害などの際、これらの機能の停止は市民生活に大きな支障となる。」と説明されています。確かに、現在の関西ライフライン研究会の会員を調べると、道路、鉄道、上下水道、電力、ガス、電話に関連した企業が参加しており、この意味に沿って関西ライフライン研究会は運営されているようです。
次にWikipedia日本語版で「ライフライン」を検索してみました。Wikipediaの記事は常に書き換えられているので、2010年1月4日日本時間午前9時46分現在の記述ということになりますが、冒頭に「ライフライン (lifeline) とは、元は英語で「命綱」の意味だが、日本ではおもにエネルギー施設、水供給施設、交通施設、情報施設などを指す言葉で、生活に必須なインフラ設備を示す。現代社会においては、電気・ガス・水道等の公共公益設備や電話やインターネット等の通信設備、圏内外に各種物品を搬出入する運送や人の移動に用いる鉄道等の物流機関など、都市機能を維持し人々が日常生活を送る上で必須の諸設備を言う。」と説明されています。さらに、「一般的に英語のlifelineは、元来、救命胴衣や救命浮き輪などにつながれた紐や縄、船乗りと船をつなぐ紐や縄、潜水夫につながれた紐や縄など命綱のこと、または、ある物事が存続するための前提となるものを指すことから、日本国内において当該用法にて使われる場合、和製英語であると考える向きが多い。」とも説明されています。え、和製英語?ということはライフラインとLifelineでは表わす内容が異なるのでしょうか。
そこで、Wikipedia英語版で「Lifeline」を検索してみました。たしかに関西ライフライン研究会の「ライフライン」に対応するような意味は挙げられていませんでした。ところが英語圏であっても「ライフライン」を日本と同じような意味で用いることもあります。アメリカ土木学会(ASCE)の下部組織として Technical Council on Lifeline Earthquake Engineering (TCLEE)がありますが、ここでは私たちのライフラインと同じ意味でLifelineを用いていますので、必ずしも和製英語だということはなさそうです。
さらにWikipedia中文版でもlifelineを検索してみました。結果、「維生管線是城市基礎設施中的管線設施、包含電力、通訊(電話、網際網路等)、自來水、雨水下水道、水下水道等管線網路。」と説明されていました。漢字の意味から察するに私たちの「ライフライン」と同じ意味で用いられているようです。
ところで、今年で阪神・淡路大震災から15周年が経ちました。この震災のように、高度に発達したライフラインシステムにおいて大規模な被害が発生した事例は、世界中を見てもあまり例がありません。冒頭で述べました通り、既に日本を代表するライフライン関連の団体となったと思われる関西ライフライン研究会ですが、大震災の経験を世界へと発信すべき時期に来ているのかもしれません。関西ライフライン研究会の活動が世界中で注目されるようになった時、Wikipedia英語版では「Lifeline」はどのように説明されているのでしょうか。
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