1. 次世代型防災マニュアルとは
大規模地震発生時には発災直後から膨大な災害対応業務が発生します。災害対応業務を円滑化する施策は様々ですが、そのなかでも、総合的な防災力が向上できる人材育成・環境整備のための防災マニュアル構築は重要施策の一つです。しかし、従来のマニュアルは記述の具体性に欠けること、検索性・更新性が低いこと、マニュアル自体の評価が行えないこと等が、問題点として挙げられてきました。
このような従来型マニュアルの欠点を解決する手法として、東京大学生産技術研究所目黒公郎教授により、次世代型防災マニュアルのコンセプトが提唱されました。
次世代型防災マニュアルは、災害の前後を問わない総合的防災能力の向上が実現する環境の提供(図1)を目的しています。そのコンセプトとして、適切なインデックス情報に基づく防災マニュアルの電子化に基づき、目的に応じたマニュアル編集、迅速な更新・検索、マニュアル自体の評価・分析、災害対応の進捗管理などの機能が提案されました。
2.「災害情報ステーション」の機能
次世代防災マニュアルのコンセプトを実現するため、提唱者の目黒教授の監修に基づいてシステム開発を行った成果が情報ネットワークを活用した総合防災マネジメントシステム「災害情報ステーション」(図2)です。
「災害情報ステーションは」2004年4月より東京ガス株式会社において稼動開始しています。常時の防災マニュアルの充実化のみならず、防災訓練(写真1)はもちろん千葉県北西部地震や新潟県中越地震(災害復旧の応援活動)等の実際の災害対応でも活用されています。
災害情報ステーションの主な機能と特徴は以下の通りです。
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災害対応行動のWebデータベース化により作業者と作業時間の関係(図3)、作業の前後関係等、従来の紙マニュアルで明確でなかった項目が明示されます。 |
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目的に応じたマニュアルが編集できることから、自分がいつ、何をしなければならないかが明確になります。 |
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防災訓練等で明らかになった防災マニュアルの問題点を随時、迅速に更新できます。 |
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震後対応行動の時間・作業者間の配分バランスの不均衡を顕在化させることができ、防災対策の効果を定量的に分析・評価できます。 |
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災害時(訓練時)には作業の進捗状況、災害情報の一元管理・共有ツールとして活用できます(図4)。 |
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災害時(訓練時)の対応で得られた反省・知見を知識データベースとして蓄積・分析・評価ができます(図5)。 |
3. 「災害情報ステーション」をパッケージソフトウェアとして販売開始
当社は、東京ガス株式会社の情報関連子会社である株式会社ティージー情報ネットワークおよび、東京大学生産技術研究所 目黒公郎教授とともに、パッケージソフトウェアを共同で開発し、「災害情報ステーション」の一般販売を開始しました。
※商品紹介HP: http://www.jishin.net/saigai/
当社の防災コンサルティング能力、東京ガスの防災ノウハウ、ティージー情報ネットワークのIT活用力、東京大学目黒教授の研究成果、それぞれの専門的能力を結集した成果で、地方自治体や中小企業等でもお使い頂けるよう機能に汎用性を持たせた安価なシステムとなっています。
行政機関における防災マニュアルとしての活用や、民間企業へのBCP(事業継続計画)展開において、強力な危機管理ツールとなるもので、当社の民間企業に対する市場開拓の先鞭をつける役割を担っています。 |
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図1 災害対応能力向上のPDCAサイクル |
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図2 災害情報ステーションのシステム構成 |
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写真1 防災訓練での「災害情報ステーション」活用の様子 |
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図3 誰が、いつ、何を行うべきかが分かるガントチャート |
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図4 災害情報の一元管理・共有する災害情報BOX |
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図5 反省・教訓を集約した知識データベース |
発表文献
福岡淳也, 石田栄介, 磯山龍二, 菜花健一, 目黒公郎 : イントラネットを利用した統合型震災対応マネジメントシステムの開発, 第28回地震工学研究発表会, 2005.8.22 |
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