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会員報告鹿島、早期地震警報を自社の震災訓練に活用

100年をつくる会社 鹿島 KAJIMA CORPORATION

鹿島、早期地震警報を自社の震災訓練に活用

事業継続を支援する「被災状況推定ツール」などを用いたより実践的な訓練を

 鹿島は、毎年9/1の防災の日前後に、震災訓練を実施しています。昨年は首都圏での地震発生を想定した時系列の対応訓練を9月7日(木)に行いました。今回初の試みとして、気象庁の緊急地震速報を社員のパソコンや館内放送で社員に配信し、安全確保のための社員の初動訓練を行いました。同時に、地震発生直後の情報収集訓練として、自社で開発した拠点建物や従業員の自宅などの被災状況を即時に推定、表示するツールを活用してより実践的な訓練を行いました。
 建設業は、大地震発生後の社会基盤の早期復旧に向けて重要な役割が期待されます。鹿島では自社及び得意先企業の事業継続のために様々なツールを開発、整備しています。本訓練には完成したツールの一部を活用しており、今後の訓練を通じて更にシステムのブラッシュアップを行う考えです。
 昨年の震災訓練の内容をご報告いたします。

訓練内容

1.【早期地震警報の社員への配信】

 気象庁が配信する緊急地震速報は、震源に近い観測点で観測された初期微動(P波)をとらえ、遅れて到達する主要動(S波)と呼ばれる大きな揺れが到達する前に、地震の発生時刻、震源位置、地震の規模などを知らせる仕組みです。試験運用を経て、2006年8月から本運用が開始されています。当社では、緊急地震速報の情報を元に、当社がこれまで蓄積してきた豊富な地盤データや解析手法を用いて、当該地域までの地盤における地震の伝わりやすさ、その地盤の揺れやすさ、また、その建物固有の揺れ方を評価した上で解析を行うことで、より精度の高い情報を提供する「鹿島早期地震警報システム」を開発、既に複数のマンション建設現場に適用しています。
 今回、本社の震災訓練では、『地震まであと10秒。震度5強』の想定の警報を、部署長をはじめとする約140名の社員のパソコンに表示するとともに、館内放送で警報を社員に伝える訓練を初めて行いました。地震までの10秒間で一体何ができるのか。社員が身をもって体験し、後にアンケート調査を行うことで、その有効性、伝達方法の検証を行うことにしています。

緊急地震速報 概念図 鹿島早期地震情報 パソコン画面表示例
緊急地震速報 概念図 鹿島早期地震情報 パソコン画面表示例

2.【重要拠点施設の被災状況を推定するツール】

 今回の訓練では、『本社の震度は5強。本社ビル群は一部に建物損傷があり、火災が発生した箇所もある』との想定で行われました。大地震時には、赤坂に点在する本社ビル群はもとより、首都圏周辺の重要拠点の被災状況をいち早く把握することが業務継続のために非常に重要です。鹿島では、早期地震警報や地震発生時に観測される地震記録を元に、特に優先度の高い首都圏の拠点の被災状況を自動的に評価するシステムを開発し、本年の震災訓練にて、実際に情報収集に活用しました。
 このシステムにより各拠点の被災程度を把握し、地震後どの程度の機能を発揮できるのかを早期に確実に判断し、事業継続のための意思決定に役立てる考えです。

複数の建物の被災度一覧 ある建物の被災度判定の詳細
複数の建物の被災度一覧 ある建物の被災度判定の詳細

3.【広域的な被災状況を推定するツール】

 もしも夜間や休日に大地震に襲われたら・・・従業員の安否確認や社員の自宅の被災状況の把握は困難を極めることが予想されます。また、被災状況によっては、出社できる社員の確保が難しい場合もあるでしょう。
 今回開発した「マクロ被災状況表示ツール」は、従業員の所在地(自宅やそれぞれの勤務先)を元に、被災状況を評価できるツールです。地理情報システムを用いて、広域的な震度分布や建物の損傷を評価し、地図上に図示します。
 このシステムの従業員の被災度推定には、後述する「従業員自宅耐震診断ツール」で蓄積した従業員の自宅のデータを活用します。

震度分布表示の例(想定東京湾北縁断層地震時)
震度分布表示の例(想定東京湾北縁断層地震時)
(a)昼間時(事業所) (b)夜間時(自宅)
(a)昼間時(事業所) (b)夜間時(自宅)
推定全壊頻度分布(想定東京湾北縁断層地震)

4.【従業員の自宅を耐震診断するツール】

 本システムは従業員の自宅について簡単に耐震診断するためのツールです。実際に、社内イントラネットにこのツールを06年8月末から公開し、社員自ら診断を行っています。社員が入力した自宅の建物情報は前述した「マクロ被災状況表示ツール」に反映され、より精度の高い被災度推定に役立てるほか、従業員は自宅の地震危険度を認知し、防災意識の向上や安全対策を行うるのに役立てています。

入力画面(1) 入力画面(2)
入力画面(1) 入力画面(2)

今後の展望

 鹿島では、これらのツールを活用し地震発生時に迅速な意思決定を行うとともに、速やかな対応体制の構築を目指しています。地震発生後、いかに早く社員、作業員の安全を確認し、復旧活動の拠点となる施設の被災状況、必要な資機材を的確に把握するかが、事業継続の大きな鍵になると考えており、今回の震災訓練を踏まえて、更にシステムのブラッシュアップを図っていくことにしています。
 同時に、これらのツールを基に、お客さまのBCP*(事業継続計画)支援に向けて、ニーズに合ったシステムを提案していく方針です。

BCP(Business Continuity Plan:事業継続計画)
   災害や事故・テロ、感染症、ネットワークへの不正アクセスなど、事業中断の原因となる不測の事態に対し、そのリスクが顕在化したときの操業度低下をどの程度にするのか、またどれくらいの時間でどのように復旧するか等を、事業やステークホルダーへの影響度を評価し、経営方針や事業戦略に基づき予め計画しておくこと。


問い合わせ先

□ 関西ライフライン研究会 法人委員
  鹿島建設株式会社 関西支店
    土木部 齊藤 勲雄 tel 06-6946-7035
    営業部 佐藤 達也 tel 06-6946-5322

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