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会員からのメッセージ災害時におけるライフライン事業者の社会貢献とは?



災害時におけるライフライン事業者の社会貢献とは?
〜災害医療に関する研究を通じて〜

(独)防災科学技術研究所 地震防災フロンティア研究センター
研究員 池内 淳子

 2008年1月、第74回定例研究会『ライフライン事業者の社会貢献〜災害医療に貢献できること、したいこと〜』を開催した。新米幹事の企画であり、パネリストの先生方はじめ、事務局、幹事の皆様には多大なるご支援を頂いた。改めて感謝申し上げる。今回は、その時のこと、その後のことについて、ご報告したい。
 本企画のきっかけは、2006年第67回定例研究会『ライフライン事業と事業継続計画(BCP)』において、各ライフライン事業者の災害に対する取り組みを拝聴し、技術者集団らしい、真面目にこつこつと取り組む姿勢に感銘を受けたことにある。災害医療の研究に従事し、病院防災力向上につながる新しい仕組みや考え方を探し求めていた私は、「病院の自助努力は当然だが、防災に対する取り組みは個々の病院規模や姿勢に依存することが課題である。しかし、ライフライン事業者は大きな組織力を生かした取り組み実績を持っていることから、例えば、災害時の給水、電気やガスの応急供給に関してもっと病院側からお願いしてもよいのでは?」との単純な発想に至った。そして、これらを「災害時におけるライフライン事業者の社会貢献」と位置づけ、電気、ガス、水道、通信の各事業者に対し、災害医療に対する体制や意識について調査させて頂いた。

 各ライフライン事業者は、これまでの災害事例において、復旧活動以外の様々な支援活動((例)発電機車による応急送電(関西電力(株))、カセットコンロ配布(大阪ガス(株))、無料公衆電話の設置(NTT西日本(株))など)を行っている。しかし、「一刻も早い復旧がなによりの社会的使命・社会的貢献である。それ以外の事例は大きくアピールしないのがライフライン事業者である」というメッセージを受け取った。テーマとして位置づけた「社会貢献」という言葉をよく考えず使用した事を突きつけられた思いであった。さらに、災害時の上水給水を例にとると、国民一人当たりに供給可能とされる飲料水は約3リットル/日程度といわれ、仮に300床の病院に患者と職員が600名いるとすると、病院の1日あたりの配分量は1.8t、つまり自治体給水車(2t)1台分のみと計算できる。勿論、単純計算であるし、飲料水に限定した目安ではあるが、病院が自治体給水車による給水のみに頼ることができないのは明らかである。当初の私の「災害時の応急対応をライフライン事業者に期待する」という単純な発想は迷走し、自分自身悩みに悩んでしまった。

 定例研究会では、医療、建築、水道、都市ガス、各々のパネリストの先生方から災害時における医療に関する事例や取り組みなどが紹介された。また、前述の調査結果もあわせて報告した。そしてディスカッションでは、パネリストの先生方が活発な議論を展開して下さった。そのおかげで、「災害時において応急対応に従事する人々は、立場を超えてお互い『LINK』することが非常に大切である」とのメッセージをもって定例研究会をまとめることができた。(余談ではあるが、定例研究会後の懇親会は、インフルエンザを患った後であったため参加することができなかった。いまだ2008年一番の「悔い」である。)

 その後、この定例研究会での事を、『災害に強い病院づくり』検討会(当研究センターで実施している病院防災力向上をテーマにした異業種連携研究会)で報告した。災害医療従事者からは「これまでの病院の対策は、供給側の事情を踏まえているわけではないため見直しが必要である」との意見が得られた。また、別の視点からの議論も展開された。「そもそもライフライン事業は公的事業ではないのか?」「水事業以外は、民間会社経営であるが、行政から災害応急対応に関して指定された機関である」「病院と同じような位置づけといえる」「では、災害医療は公的事業??」・・・迷走・・・

 『公的』かそうでないかの明確な線引きがしたいわけではない。ライフライン事業者と医療機関は、公的な側面が強い社会的使命感を持ちながら、同時に日常的に厳しい経営効率を求められる。『世間は、社会は、いったい両者に何を求めているのだろう?』という問いに対する答えを探すための議論をしたのだろう。そしておそらく両者が悩むほど、世間はそれほど何も意識していないのではないかと思う。しかし、このような大事な事が意識されていない現実を抱えたまま、今の平穏な社会を持続できるのだろうか? まずは今回のような議論を巻き起こす事が必要なのかな?
 ・・・いまだ答えはでない。さて。皆さんはどのようにお考えになりますか?


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