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会員からのメッセージライフラインとテロ



ライフラインとテロ

京都大学工学研究科 助教授
清野 純史

 2001年に起こった米国の9・11テロは、米国内だけでなく世界を震撼させた想像を絶する出来事として記憶に新しい。しかし、現代社会においてはこのテロの問題を避けて通ることはできず、世界有数の安全国家と謳われる日本においてすら例外ではない。安全で安心な社会を築くためにはこのような問題と真摯に向き合い、横断的な学術分野で関連する危険事項を洗い出し、それぞれの専門的な立場からその防止策や対応策を検討しておく必要がある。爆弾テロや化学テロ、バイオテロの実態を知った上で、わが国に考えられるテロとはどのようなものなのか、またその防止策や対応策をどのように考えたら良いのかを検討することは、安心・安全な都市社会を築く上で必要不可欠な課題である。

 例えば社会基盤施設の代表格であるライフラインは、これほど日常生活で意識することなくその恩恵を被っているものはない。それほど安心で安全な基盤施設と言うことができる。しかし、経済への打撃、日常生活への影響、安心・安全社会へ及ぼす心理的影響の大きさを考えると、逆にライフラインほどテロの標的となりやすいものはない。大都市を縦横無尽に走る高速道路には危険物を積載した車両が無数に走行している。また、混雑時には隙間のないほどの車両が高架橋の上で渋滞している。新幹線は現在東京−大阪間を1日300本近く走っている。高速走行は新幹線のみならず、在来線でも170km/hにも達している。上水道は都市内を網の目のように走っており、目に付きやすい山腹には貯水施設が無防備に存在している。臨海地域には巨大なオイルタンクが林立し、それらを結ぶ湾岸には長大橋梁が連続している。爆破テロやバイオテロ、ケミカルテロに対して、これほど無防備なものはない。オフィスや住居としての大都市の高層ビル群もまた同様な危険に晒されている。

 テロに関するこれまでの研究としては、パレスチナ問題を抱えるイスラエル(主に爆弾テロ)や9・11テロや炭疽菌テロのあった米国、2005年にロンドンの地下鉄爆破事件が起こった英国などがかなり進んだ研究を行っている。特にアメリカは2001年の炭疽菌テロ以降、バイオテロの研究にも莫大な予算をつぎ込んでいる。このような海外の事例や対策を参考に、爆弾テロやバイオテロ・化学テロのような手段が、大都市やそこに住む人々にどのような形で使われる可能性があるのか、その際の事前対策や事後対応はどのようにすべきかなどの課題に対して、日本固有のテロリズムのモデル化とそのリスク評価はどのようなものであるべきかの枠組みを早急に提示する必要がある。

 大都市の居住施設やそこに住む人々、また電気・ガス・水道のみならず道路・鉄道を含む社会基盤施設が様々なテロに対してどのような脆弱性を有し、ひとたびテロが発生すればどのような事態が発生するのかを、リスクマネジメント、ライフライン、地震工学という学際的な観点から検討する時期に来ているのではなかろうか。


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